夜明け前の雷雨/山人
それぞれに出世していると聞く。会社の海の波乗りが上手い人になれなかった。だからつまり、こんな風にぼろぼろの体で山岳に入浸っているのであろう。
夜明け前の雷雨は治まり、小雨となっている。まだしばらく続くであろう秋雨前線は隣の籾乾燥施設の近くの葛の葉を揺らしている。ホオジロは凡庸な声で鳴き、籾の屑でも拾いに来たり、仲間を呼んでいるのであろうか。
勤務は家業のため午前中は休むとあらかじめ連絡をしておいたのだが、雑用も嵩み、午後からも休みますと上司にメールした。こんな雨模様で足場の悪い中、半日五〇〇〇円の日銭を稼ぐために危険と引き換えに山に入るというイメージが湧かなかった。ただそれだけのこと。
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