九月の夕立ち/九十九空間
そうして、
窓に叩きつける夕立ちを眺めていると
心のいちばん深いところで
理解できる
君は何ひとつ
本当のことなど言わなかったと……
ベランダに迷い込んだ
茶色い蛙を
そっと田んぼに逃がした
そうして、傘から伸ばした右腕を
激しい雨に打たれるがままにしていると
今すぐ裸でこの田んぼに
飛び込んでしまいたくなる
整然と並ぶ
刈り取られたあとの稲株
そこから生えているひこばえに
全身を擦りつけたい、
手を洗い
急いで取り込んだ洗濯物を畳みながら
すこし濡れた袖を、許してゆく
そうして、
窓に叩きつける夕立ちを聴いていると
心のいちばん深いところで
理解できる
君の言ったことはすべて
君の心の、本当の言葉だったと……
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