傘は要らない/ホロウ・シカエルボク
 
うだろ?俺が言っているのはそういうことさ、雨がパラつき始めた、嫌な湿気がまとわりつく、でもそれまでいい気分だったわけでもない、だから別にどうってことはない、もう目当ての場所はあらかた覗いてしまった、雨が降らなければ買物でもして帰るところだけど、今日は止めておく、繁華街を抜けて大通りを南へ横切り、これまたかつての栄光は見る影も無い風俗街を抜ける、何故か分からないけど、街からの帰り道は必ずここになってしまう、きっと、潰れたファッションヘルスなんかの店舗にこれでもかとばかりに詰め込まれているごみを見るのが楽しいんだろう、このあたりはどんな天気だって湿気て、煤けている、でもいくつかの店はまだ営業を続けてい
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