僕は君に/九十九空間
夜明け前の
ゆっくりと青くなっていく町で
会ったことがない人に恋していると
僕の意識も
やさしい光にそめられていくようです
僕は君が好きです
それがとても、嬉しい
真昼の
夏と区別できない日差しに焼かれながら
会ったことがない人に恋していると
身体の奥から
正視しがたい衝動が湧き上がってきます
僕は君が好きです
それがとても、悲しい
夕暮れの
秋のはじまりを告げる風に吹かれながら
会ったことがない人に恋していると
星のさざなみが
空へ打ち寄せているのが分かります
僕は君が好きです、
君が好きで、好きで、
君に、会いたいのです
会いたいのです
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