魔女と恋わずらい/46U
恋わずらいの人魚に声を貸した
異形がしあわせになるのを見たかった
吟遊詩人の夢折れそうなカラスから声を借りた
喉を巧く操れば 最高に扇情的な旋律が紡げた
人魚に貸した声は戻ってこないだろう
カラスからは二週間ごとに督促状が届くだろう
ヒトがヒトウオの生殖方法で満足できるわけは無いし
もともと愚かな恋だったと
長命の人魚が知るのは十年単位どころじゃない
カラスはけっきょく吟遊詩人の夢を捨てきれないし
こちとら声を質に取るくらいには病んでる恋してんだ
ねぇ 督促状のきみの筆跡にまたぞくぞくしてくちづける
最高の声をきみのためには使わないよ
腰が砕けちゃうあまいハスキーヴォイスの値打ち
けっして教えたりするもんか
魔女のポストには二週間ごとに封書が届く
老いゆく身で彼女は今日も
目をほそめてペーパーナイフをすべらせるのさ
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