姫/ただのみきや
太陽の剃刀は陰部からひと脈の血を匂わせた
人肌の季節を占って結露した光の置き場に困り果て
まだ暗い田畑で骨を拾う
骨は拾われる度に肥え月や星の声を濁らせた
他者の思考の中で溶かされる甘い小舟から身を躍らせて
様式化された神話を清姫のように遡上する火は水のように
舌と唇の間で胎児を躍らせた
ネオンサインの規則性を読み解くことに長けた
凡庸たることの専門家たちの水平線から滑落し
マグマを抱えた乳飲み子として飢えながら虹色の嗚咽を繰り返す
影を揺らし針仕事をする母の目の中で一匹の黄金虫となって溺れ
深く彫り込まれたひとつの脳にも似た名もなき陰影
薄布一枚向こう一山の夢を腐らせながら鈴を振るもの
(2024年9月8日)
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