せかいと/佐野ごんた
すべてがつながっていて
すべてが己の分身ならば
なにを償えばいい
すべてが投影された幻で
すべてが予定調和ならば
いったいどこへ向かえばいい
信じること
深く愛すること
裏切ること
悪態をつくこと
真実も嘘もないせかいで
この意識のたどり着く先が
波動という
かたちのないものならば
あらがうことに意味はない
すべてをゆだねて
吐ききった呼吸の底から
真綿のようにすべりだす
幼いあしが踏み出すさきの
ひとつひとつを確かめるような
伴奏
トロイメライ
チェロ
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