その腹にはいったいどんな言葉が記されているのだろう/ホロウ・シカエルボク
 
思議なことに、消防車や救急車がやって来る気配がなかった、サイレンすら聞こえて来なかった、俺は辺りを見回したが野次馬すら一人も居なかった、いつから人間を見ていないんだろう、そう考えて初めて怖くなった、飛行船を見つけた時はどうだった?周りに誰か居たか?思い出せ、あの時も墜落現場に居たのは俺だけだった、消防車も救急車も来なかった、俺はライターを一番大きな火にして灯した、これになにかあるとでもいうのだろうか?ライターはすぐにガス欠になった、俺はどうしてライターなど持っている?俺は煙草を吸わない、こんなもの持つ必要が無い、猛烈に頭が痛くなった、その時初めて救急車のサイレンが聞こえた、激しい振動も感じた、目を開けると俺は救急車の中で横になっていた、気付いた、と俺についていた救急隊員が呟いた、「分かりますか?」分からない、何も分からないと俺は答えた、隊員はあれこれと分り易く説明してくれていたが、どういうわけか俺はそれをうまく理解することが出来なかった、外の様子なんかまるで分からないけれど、いま俺の頭上を、あの飛行船がゆっくりと飛んでいるのではないかというそんな気がしてならなかった。


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