青と碧/ヒロセマコト
 
日暮れとともに出港し
太平洋を南下する航路
フェリーの舷側が
海面を撫で
闇の中に小さな白波を立てる

夜半に目が覚め
風にあたろうと
デッキに出る扉を開き
手すりにもたれた
夜空より暗い海をのぞきこもうと

そこで見たものは
船を取り巻く無数の青い光
船べりが立てる波に反応して
青い炎のように発光する
夜光虫という生命の輝き

発光しては
航跡の中に消えていく
どんな豪華なイルミネーションも
あれを超えることはできない
私は時を忘れて見入った

何十年も前に見た光景が
いまだに私の心を震わせ
記憶の中で発光し続ける
青と碧(みどり)を溶かしたような
あの絶妙な色合いで

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