刃/完備 ver.2
ぼくたちはみずうみを避けた
透明なびーどろのような愛を
くちうつしするとき
手首からはがれ落ちるかさぶた、ぼくのなみだに溶ける平仮名、ふれることなく過ぎる雨雲、日々、
ぼくの肺をひろげる羽を
掴んで、毟って、引っ張った手で、
きみは
ほとんどひかりのような刃を握っている
きみがあいした星のない犬を
ぼくがいま抱いている
それでも
きみはぼくの
苦しまぎれのきれいごとを、ひとつ残らず拾ってくれるのか
*
星のない犬のまなざしはどこか人間じみて
身体のにおいは純粋な獣だった、
みぶるいするきみはすこし獣じみて
涙するきみはやはり人間だった、
いつか、みずうみから吹く風がきみの刃を錆びつかせるから
もう乗ることのない舟に
清潔な火を放とう
涙をぬぐうぼくのゆびが
きみの視線を一瞬かくす隙に
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