この沸騰の夏日に(新訂)/ひだかたけし
夏の遠き
記憶の残照か 、
闇の粒子掻き分け
兄に導かれ辿った森の
深奥に闇の明けゆく朝焼けと共
カブト虫やらクワガタやら
幹の蜜をじっと吸い込み黒々艶めくを
発見した瞬間のオドロキ鮮やかに
蘇るこの沸騰の夏日 、
兄も父も母も最早居なくなり
チリンチリンと風鈴も鳴らず
ただ今の私の魂の意識にだけ
あの瞬間の時空の旋回光り輝き
もわりもんわり膨らみゆく
輝雲の行方 、追っている
*
もわりもんわり膨らみゆく
輝雲の行方追って居る私は 、
あのオドロキの瞬間、
あの瞬間の時空の旋回光り輝き
未来から到来する鮮やかな様
未だ掴み得ぬこの感触の実体
もどかしき想い抱えながら
輝雲の突端にぶら下がり
かろうじて堪えて
共にもんわりもわり
オドロキ在ること追い縋り
愛の陽光に照らし出されゆく
地上の過ぎ去る日々の虚しさ
なのにこの在ることの実感感触
未来未知の深遠深部より巡り来る 、
永劫に散布される燐光の慈悲の如く
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