夏の日に/岡部淳太郎
夏の日に
僕等は少しだけ詩的になる
降り注ぐ太陽は殺意とともに肌をじりじりと焼いて
そんな苦役さえも受け入れて
僕等は夏を楽しむのだが
夏の日に
僕等は少しだけ何かを予感する
この喧騒の気忙しさのなかに
来たるべき恐ろしいものが隠れているのではないかと恐れて
けれども ほんの少しだけ期待して
僕等は夏を急ぐのだが
夏の日に
僕等は少しだけ息苦しくなる
その少しだけ息苦しいところが好きと 君は言った
その少しだけのなかに多くの吐き出せなかった呼吸を秘めて
君は僕等と夏を駆け抜けたのだが
夏の日に
僕等は来ることが定められた季節の曲がり角を予見する
思いは息苦しさのなかでとどまりながら
そのままで 夏の最後の冷水とともに飲みこまれる
そんな夏が好きと言った君もやがて季節を曲がって
気がつけば僕等と過ごした夏は終わるのだが
それから
(2024年8月)
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