キリスト/ひだかたけし
哀しい風が吹いている
彼女の歩き過ぎる横顔に
あの坂道向こうの奈落へ
歩み進み墜ちていった
彼女の歩き過ぎる横顔に
哀しい風が吹いている
雨降り頻るあの夕に
マンション玄関ホール
ひたすらに立ち尽くし
胸の高鳴り耐え待ち続けた
運命の人の横顔に
今も風が吹き続け
この夜前にし静かさの刻に
私が自ら奈落の闇へ
遡行しては日毎夜に 、
近付き来る彼女の横顔
哀しい風が吹いて来る、
私の面に
私の魂の内底の
普き光の大洋から
近付き来る彼女の横顔
哀しい風に雨降り頻る
日毎夜に遡行しながら
ふっと到来するあの横顔
ふっと現れ在る、
私ではなく私の中の
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