レコードの溝の数/ホロウ・シカエルボク
けている、俺は知っている、でも認識としては、知らないと言っていいようなものさ、俺はそれをはっきり言葉にしようとは思ってはいない、ぼんやりと鳴っている音楽のようにそいつはいつも俺の中のどこかで喋り続けている、でももうそいつのことは知りたいとは思わない、在処を探したって無駄なのさ、そいつは絶対に捕まえることが出来るところまで出て来ることはない、それは捕まえる必要が無いからさ、知りながら追わない、そうしているとずっと、一定の距離を取りながらこちらを窺い続けている、それは関係性としては非常に希薄なものなのかもしれない、もしかしたら直接関係のあるものではないかもしれない、でも決して手が届かないと思えるほど遠
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