Life In The Fast Lane/ちぇりこ。
 
始まりに生まれて
(夏の終わりに死んでしまう
(長い捕虫網を携えた
(汗臭いボウズ頭は
(日に灼けたランニングシャツのかたちで
(一心不乱に網を振り回す
大森先生はいつまで経っても
号砲を鳴らさないでいる
スタートラインに立たされたぼくらは
スタートできないでいる
次第にじれてきた河合が
早瀬が山本が落合が田村が
スタートライン上で地団駄を踏み始める
規則正しい静かな暴動が夏に生まれる
(ひ弱な少女が児童公園の
(銀杏の木の幹にしがみついて動かない
(やがて背中に薄っすら一筋の線が現れ
(羽化が始まる
はたして号砲は鳴らされなかった
スタートできないぼくらは
あの日の夏に取り残されたまま
どこにもゴールできないでいる
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