Interlude。/田中宏輔
 
何か落としたぞ、ほら、きみのだ。
(ナボコフ『ベンドシニスター』1、加藤光也訳)

たしかに、
(ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳)

僕のものだった。
(ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳)

小波(さざなみ)の渦が
(ナボコフ『ベンドシニスター』1、加藤光也訳)

ハンカチを巻いて
(コクトー『怖るべき子供たち』1、東郷青児訳)

すうっと消える。
(リルケ『マルテの手記』第一部、大山定一訳)

花のように
(ヘッセ『詩人』高橋健二訳)

ハンカチは
(サルトル『一指導者の幼年時代』中村真一郎訳)

ほどけてゆく。
(サド『美徳の不運』前口上、渋澤龍彦訳)

僕は
(オクタビオ・パス『青い花束』野谷文昭訳)

ひかりと波のしぶきのために、
(カミュ『異邦人』第一部、窪田啓作訳)

目をさました。
(モーリヤック『蝮のからみあい』第一部・10、鈴木建郎訳)

眼がさめた時には、なんの記憶もなかった。
(モーパッサン『山小屋』杉 捷夫訳)

戻る   Point(9)