感光/残滓/ただのみきや
幽霊が立ちはだかった
張りぼてを失くした空ろが影を成し
埋まらぬ間合いを計っているのか
いつまでも近づけず触れられない
握りつぶした小鳥が何度もリプレイされ
下腹部では柔らかな秒針が
生と死のゼロ地点で花のように揺れていた
年上の娘に恋をした わたしもまた
幼ごころを喰らってしまったのだ
残りかすの情欲は羽化することなく
ぬめぬめと
ただぬめぬめと視線を這わせるばかり
ああ成りかけの死者
美しい老いなどどこにある
生きつづけるという刑罰に
いつ どこで
なにを誤ったのかと────
遠い夏の感光
蝉落ちて眩む朝
(2024年8月14日)
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