草加健康センター/形代 律
八月の
草加健康センター
高温のサウナで
汗を流していると
空襲の火の海で逃げ惑う人々を
想像する
熱い 熱いと
泣きながら 親や子を亡くして
祈りながら川に飛び込んだひとが
灼熱の水に焼かれる
いまやかろうじて虚構で
伝えられる絵図だが
熱い 熱い と呟いて
わたしは約束の冷たい水にほどかれる
彼岸に
何かをとどけられるのなら
火の中では決して咲かない花を添えて
あなたが得たくて 得られかった
水を手渡したい
わたしのたなごころに溢れる清らかで冷たい水を
死んだあなたと分かちあいたいのだ
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