天地天地天地/木立 悟
か
土の冷たさに足の皮を剥がされながら
巡り巡り巡りつづけても此処はなお夏のまま
誰一人居ない夏のままなのだ
何も映さぬ水の目をして
光の器の子は迷う
泥は泥の地図を描く
雪と光は降りつづく
夜は見た
夜に手を振る夜を見た
毛穴にはばたく羽を見た
金を緑に導く火を見た
指のはざまにひしめく蒼を
雨粒に変えては花を生む
手のひらに立つけだものを
空へ空へと放ちゆく
雨の重さが風になり
夜の奥を波立たせる
さわさわと さわさわと
帰ることのない背を押してゆく
小さな夜が窓に触れ
鈍く淡く光りつづける
砂浜に散らばる十字の流木
天地の蒼を見つめつづける
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