「イットと呼ばれた子」/由木名緒美
 
うな暴力を受け、尿道に体温計をつっこまれて成長したこどもがやがて連続性犯罪者となり、最後に与えられるのは死刑とあらゆる罵声。

これが「平和な社会」なのだろうか。台所が臭いならゴミ箱を洗えばいい。平和な世界を願うなら犯罪者と向き合う行為は避けられないように感じるけれど、ただの妄想だろうか。

「正義」という言葉は、まるで「ガーベッジ・クラス」のこどもを隔離し、正常児だけの遠足会に満足気に笑っている大人達のようで、ガーベッジ・クラス出身のろくでなしのくずとしてはむなしさ覚える。

これだけの惨い歴史が累積した「現在」という地点から「平和」という未来を構築していく手立てがあるのだとしたら、惨たらしい闇を直視し、愛の眼差しで融和していく努力なしには、人類は進化していけないのではないだろうか。

一人の犯罪者が笑う時、世の中は一歩、平和を叶えていく。そのように思うけれど、闇は深淵で近づけば近づく程気が遠くなるばかり。
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