雨を呼ぶ/宮内緑
軒下から通りをみつめていた
腕には光るホタルの輪っか
やがて風抜け穴の向こうに気配がすると
誰かにめいっぱい手を振った
きょうが特別な日であったことは
さっきまでの賑やか音でわかる
こんな遠音を幾たびきいただろう
夕雨と歌いあわせた季節 稲の花咲く頃に
わたしたちは無数に出逢ったのだろう
おなじような水辺を 声をたよりにすすんで
(わたしを見つけつづけてくれたあなた)
遠い記憶が雨をよべという
親たちの記憶が命を繋げという
わたしはひとり庭にひそむ蛙
それでも呱けと雨が誘う
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