雨を呼ぶ/宮内緑
今はひとりぼっちのこの庭で
かわきに怯え 空に問いかけている
この記憶がわたしのものでないのなら
きっとほうぼうを巡っている雲のものだろう
わたしはおりてきた雨をあびるようにのむ
あぜ道を歩いていたあなたは、誰であったか
あなたと出逢ったわたしは、誰であったか
風もつよく流れはじめた
抽選会当たってたらどうするの?
去年も途中でふってきたんだよ?
雨の音に混じって聞き慣れた声
そこへまたぴしゃりと劈く稲妻
小さな悲鳴が庭へ駆け込んでくる
乾いた夕べに水をまいてくれる母娘
わたしの庭の仮初めのあるじ
娘はしばらく家に引っ込まずにいて
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