ルード・ボーイたち/中田満帆
 


 鍵穴が合わない夕べ地階にて癌検診の通知受取る


 裏階段上るだれかのかげをいまひとりじめする身勝手ばかり


 布ひとひら浮かぶ人工河川やがて来るだろう裁きなど忘れつ


 〈屠〉という字やがて葬られる字なり夏の蝿集る場所もなくて


 咲きそめる花は嵐か 従業員通用口に吹きだまるもの


 愛の経験もなしに道ゆくわれのなかを走り抜ける夏のしぶき


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