紅の涙/蝶番 灯
乾いた眼に 兎の紅の血液
眼を 私は 瞬かせた
何も言わない私に
兎は言うのです
「人間の美しさとは、残酷なものです」
今日玄関の扉を開けると
目の前に、真っ白な 私の夢の中の 兎が横たわっていました
その兎には汚れの1つも無く
白い白い胴の真ん中に 紅の斑点1つ
私がその 不動の身体に触る頃
もう既に冷え切ってて
緑の庭に 小さな小さな赤土の丘
白い菊の花を献花しました
あの口紅なら、もう棄ててしまった
昨日死んだ兎を埋めてやったら
今日の夢に
昨日の夢に出てきた兎が出てきました
私がその兎を強く抱き締めたら
兎は言うのです
「あなただけでは、僕1人しか救われない」と
私は言うのです「どうして」と
兎は言うのです
「まだ何億も 美しさを求めるが故に 僕らは殺されているのだから」
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