由比寺の刀/atsuchan69
 
ない」

 島木氏は満足げに答えた。

 宴たけなわとなった頃、突如として赤い鎧を纏った者たちが乱入した。その者たちは荒々しく、酒に酔った無防備な領主たちを刀で斬りつけた。島木氏も、鉈のように降りおろされた刀の一振りで敢なく倒れ、朽ちた落ち武者のごとく無惨に転がった。

 このようにして、義久はいとも簡単に領地を広げた。領主なき隣国には、すでに義久の側に与する者たちが散りばめられている。しかし、彼の心には常に疑念と不安がつきまとっていた。

 さて、島木氏の家臣、鹿島景時は頑なに城を守った。

 石垣で囲われた緩い緑の斜面がつづく城の外堀では、槍を持った佐川氏の軍勢が声をあげて
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