フィクションへの意思/鏡文志
人の足元を見て、後ろ指をささんとする人間は、多い。
迎合が逆切れすると、自分史を語り出す。悪い癖だ。
私小説を語ることの難しさは、実際の現実生活は、混沌とした疑問符だらけだということだ。
疑問符だらけの人生に答えを見出すのは、落ち着きのないところに落ち着きを得ようとするようなものだ。
すると、釈然としなさばかりが、残る。少なくとも、私の人生は、そうだ。
フィクションの世界と、音楽の世界に見出した官能と、美。ここに答えと抜けの良さを見出す。
それが私の、得意とする作風である。
そこから脱線してしまったものは、私にとって、作品ともなんとも言い難いもので、その釈然としな
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