陽炎/
リリー
日照りつけて
前方に霞む百日紅には
二匹のクマンバチ
ふと足もとを
蜻蛉のちぎれた一枚羽が
微風に 晒される
古道の低い石積みの傍、
生い茂る樹木の根元で
細い足をひっかける空蝉
その背に、何をのぞきみるのか
地中貫くような刃が
地球の裏側まで突き通すほど深く
鋭い割れ目だ
陽、乱舞する白昼
前方を往く人影は消えて
数多の小さな鼓動 大気に溶けている
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