花火と雲と風と影/秋葉竹
ないから
ひとの希望という名の《絶対》が
すこしずつすこしずつ世界の階段から
ズレていくのを
時計の《とき》を考える時間にそっと感じて
雨上がりの満月の周りに
くっきりと虹がみえるという夢をただみたい
夜は、ちいさな胸にいっぱいの宝物を隠し
遅れて明日の朝には永遠の始まりが始まる
ガラスの靴を履き忘れて消えてゆく
私はいっそこのまま死にゆくのも悪くないと
おかしくもないのに、ちょっと笑って
眩しくもないのに、鮮やかさに目を奪われて
懐かしい古い家を心の中に探そうとする
打ち上げられた大きな大きな花火の
絵と、そのしばらく後に轟く音の時間差に
私は震える《うた》の心をみた気がする
人間的な満月や、月の周りに架かる虹を
焼くことのできなかった花火たち
夜風にゆっくりと流されながら
幾千幾万の綺羅な星々をなんども
夏の花火大会の火薬の煙でみうしなった
なにもなにもみえなくなったのだという
声なら声が、いつのまにか忘れ去られて
延々と煙だけがまとわりつく
まるでなにもみえなくなった、夜、だった
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