白紙への長い旅/ただのみきや
 
からない仕草で肢体を奏でながら
色も匂いも響きもなにひとつ白紙の墓から漏れはしなかった


残らず文字の飛び去った詩集を開いて
夢を見ている男

白紙の海へ下げ振りを沈めて測るものは角度でも深さでもない
自分自身が錘であって現世との細い繋がりを残したまま
深く沈んでゆく記号に特化したむき出しの五感なのだろう
わたしが現世に残すものはかつての記号たちの断末魔の影にすぎず
魚信は無限の孤独が呼び起こす癇癪による自作自演かもしれない
詩は身体の一部を切り取られて血を流す傷ついた現実の震える絶叫
だから翼を片方切られた鳥や千切れかけた蝶のように眼差しを手繰り寄せ
虚空の琴線や水
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