やわらかな墓標/塔野夏子
 


夏にだけあらわれる
小径の奥に
ひっそりとした場所
そこにやわらかな墓標がひとつ

あたりを囲む緑のざわめきの中に
なぜかいつも感じる
揺籃の気配
その中には多分 壊れた玩具の天使がいて

壊れたままに 微笑んでいる――
その微笑みのうえに
昃(かたむ)く夏の日

やがて蜩(ひぐらし)が鳴いて
それに呼応するかのように
やわらかな墓標は かすかに羽ばたく



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