東の海辺から/嘉野千尋
 


  打ち寄せる波の数をかぞえながら、
  そのかたわらで
  ぼんやりとあなたのことを想ってみたの
  砂に書いた手紙は、
  しだいに波に攫われて消え
  そんな風に、
  想いは儚くなっていくのかしらなんて
  そんなことを想ったりしながら



  東の海辺から、あなたを長い間想っていたわ
  水平線を遥かに眺めるときにだけ
  わたしはただ独り寂しさの中にいることができた
  変りゆく空と海とを見ていたわ
  あなたの面影があまりにも遠くて
  ほんの少しだけ涙が流れたけれど
  浜辺に寄る波の数をかぞえながら、
  移ろう季節を見送っていたの
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