オリオン航海誌(3)/嘉野千尋
いずれあるべき場所へ行くんだよね」
トランクの片隅に、ひびの入ったビー玉がいくつか転がっている。
赤、緑、薄青、透明・・・スピカは右手に人形を、
そして左手にビー玉を持って唐突に立ち上がった。
「これは君に、オリオン。それから僕は少し出かけてくるよ」
ひびの入った薄青のビー玉をオリオンに手渡すと、
スピカはシルクハットの人形を片手に部屋を出て行った。
オリオンはしばらく扉を見つめていたが、
窓辺に歩み寄って陽の光にビー玉を透かしてみた。
硝子の中に閉じ込められた気泡と、細かなひびに光が当たって
虹色の光が煌めいて見える。
オリオンは小さく笑って、それからビー玉をポケットに納めた。
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