オリオン航海誌(3)/嘉野千尋
 
   *スピカのトランク

   スピカの青いトランクの中には、壊れた物がたくさん入っている。
   それは三時半を指したまま止まっている古い置き時計や、
   硝子玉の取れてしまったおもちゃの指環などである。
   捨てるに捨てられないそういった品の中に、
   その人形は混じっていた。
  「スピカ、その人形をどうするんだい」
   埃を被ったシルクハットの人形を片手に座り込んだままのスピカに、
   オリオンは首を傾げながら問いかけた。
  「さすがに君も人形遊びをする年頃ではないだろう」
   人形をぼんやり見つめたままのスピカは、ぽつりと呟いた。
  「みんないず
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