ひとつ 小さな/木立 悟
 



隻眼の花にこぼれる
はじまりの波のはじめから
めぐる魚からほどける光
片方の目はまばたいて
沈みくるものを受け入れる


敗れつづけてなお勝つものがあり
不幸せの上に成り立つ幸せ
ちからだけの正しさに背いてゆく
不在の容れ物のなかにまぎれた
小さな小さな集まりとして


空のすそがひるがえり
その向こうに見える空から
在るものすべてをつらぬいて
水のような光が走り
からだをつくるひと粒ひと粒
泣き顔のままうずくまる子へ届いてゆく


うすくうすく閉じられた目が
ふたたびゆうるりひらくとき
のぞきこんでいたたくさんの
小さくて不器用な笑み
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