微熱/アラガイs
 


あの日みた映画の話しは覚えていない
たぶん外は小雨が降っていた
隣の席に座ったコート姿の貴女は
しっとりと肩まで伸びた黒い髪に
その日風邪をこじらせていた僕のあたまに
朦朧とした熱い思いを吹きかけた
少し年上のような気がした
     
          一日に一度恋をして
                   二日に一度別れた
 そして 恋の多くは釣り竿だった

暗い映画館の端の席で
あの日僕は熱にうなだれていて          
二人はずっと緊張していて  
濡れた貴女の傘に  そう思った 
あの日覚えているのは
終わりまで見ることのなかった
                         貴女の面影


 
                 


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