バカ可愛い、略してバカカワ/秋葉竹
 
僕の時間は少しだけあの頃に戻って
青葉の街路樹のてっぺんをみあげたのは
いきなり泣きそうになったからだ
なんだかバカみたいに

バカ、と云えば

『バカカワ』

って
云う言の葉を作って
君に送ったとき君は
あたりまえだけど訝しげな顔をして
なにそれ、って訊いてくれたから

「バカみたいにカワイイ、君の存在」

あなたこそ、バカね、って
言下に僕の言の葉に
否定的な感想を述べて笑ってた

その笑顔の明るいことと云ったら。

あゝ、そんなこと想い出すもんだから
なんとか耐えていたのに頬に
細くて温かい水が伝うのを
二十年ぶりに
感じた七夕を過ぎた今日、
君に二度と逢えなくなった知らせを受けて
衝動的にこの街へ来たのは
あの頃の君に逢うためだったんだ、って
初めてわかったんだ

でも、
この川にはボートに乗ったふたりの姿は
もうみえなくて。







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