雲居の空/リリー
 
 夕立の雲が垂れ込めているのに
 ふりそうにない
まだ降らない
まだ降らない
まだ降らない
 その短いようで限りなく不穏な時
 
 夏草の背の高い奥庭
 開かれた窓に
 夕顔が、何と白いこと
 その横に
 ライラックの樹もだいぶん伸びた

 すっかり暗い灰(うず)みに惑わされながらも
 私の胸は花の様に開いていた
 何故
 人を愛した時と同じ心のゆらぎが
 あるのだろう
 快くて熱っぽく
 そして新しい事なのか

 生垣のむこうで
 子供たちが笑い声立てながら
 駆けていく
 雨粒の落ちてくる瞬間をはかっている
 私の耳に足音は
 薄らかな影となって残った
 
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