ミニヨンならざる者の歌/佐々宝砂
ええ レモンの花は咲きません
ええ こがねの柑子も実りはしないのです
くらい森に目立つのは
変にほうけたタケニグサ
それからキノコ
ススキの穂
でもあのはるかかなた森の奥
湖があるのです
深い藍色の水に
さまざまな生き物を住まわせた
冷たくて重い湖が
ええ 誰もあなたをなぐさめません
ええ 誰もあなたに微笑みかけはしないのです
夜が更けてゆきあなたは孤独に
頼りなく電柱に寄りかかります
そこからこの森まで
わずかに半歩
その半歩をあなたは踏み出しません
でも聞こえるでしょうその道のかなたから
鳥のはばたきが木々のざわめきが
ひくく
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