サボテンとの別れ/soft_machine
 
サボテンとの別れ
身を切られるような痛み

きみとは何万語のことばを交わし
無言で見つめあったろう
きみはわたしの髭を
わたしはきみの棘を
お互い数え飽きなかった日々が
あえなく終わろうとしている

サボテンとの別れ
焼けつく砂漠への憧れ
テンガロンハットでカーマインを彩り
風のなかで傷つき、傷つけ抱きあった
爽やかな残り香と
まだらな記憶を蘇らせた日々

サボテンとの別れ
窓辺にふたりの思索家がいると
ビルの五階で仄聞し
一棟一棟、訪ね歩いた日々
グラスの割れ目から滲みだすテキーラで
とろとろと垂らし育んできたものが
サボテン様は神さまですか
何も答えない
サボテン様は堕天使ですか
にっこり微笑む

サボテンとの別れ
サボテンとの別れ
さよならにするか
さようならにするか
あした青空に架かるはずの
虹によく似た別れ




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