二十年の季節の物語/佐々宝砂
 
その星では、四季それぞれが地球暦二十年の長さを持つ。

1.祖母(夏のはじめの生まれ)

もう夏が終わるのだと父が言う。父は冬生まれでこれまで二季を過ごしている。祖父はといえば地球生まれなので何季とか言えないらしい。三百六十五日で春夏秋冬全部が巡るなんて、祖父が生まれたところはなんて目まぐるしいのか。私は夏のはじめの生まれで一季しか知らないから、夏以外の季節を想像できない。汗と雑草と水泳の夏、と父は言うけど、汗も雑草も水泳もない毎日ってどんなのだろう。私は少し怖い。


2.祖父(夏のはじめの生まれ)

秋もじきに終わる。秋というものはものはずいぶん穏やかで暮らしやすい季節だと最
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)