病葉(わくらば)/
椎名乃逢
私は花にはなれなくて
私は花を見るだけで
羨ましげに茎の影から
陽にあたるその透けた花弁を
雨粒が伝うその雌しべを
蝶に奪われゆくその蜜を
私の憧憬への軽い蔑視を
ああ 蝶よ
私に卵を産みつけて
幼き虫よ殻を破り
私の体を食べ尽くせ
いずれ私の葉脈は
君の血潮に受け継がれ
あの麗しき花びらに
濃厚なる口づけを
そしていつか見た蝶のよに
溢るる蜜をしたたらせて
ホルンの音色でまどろみを
あの美しき花に捧げよ
あの美しき私の花に
戻る
編
削
Point
(2)