或る女/リリー
 
 陽のかげる時
 美しくなる人だった
 陽の輝く時は
 自分から遠くなった心を
 捜しかねているのだ

 まして雨の時など
 濡れた頬に
 昨夜のベーゼが生き生きと甦っている

     ※

 日ごと熱をたくわえ
 地が夏を迎える為に
 その面を緩くしてゆく
 唯 そこだけ暮れ残った神社の脇道
 熊笹の緑が 側溝の水音と戯れ
 日中のむし暑さから
 安堵した顔つきをみせている

 駅までの途中、
 花屋で買った雪華草の鉢
 白い小花は 
 天使たちのたわいない呟きの様で
 キラキラしている

 夜の向こうから 
 あなたの声がきこえないのを
 よく知っていても
 心の乾きに清らかな歌を忘れ果てても
 月の色は 忘れていない
 詩心の蒸発してしまう事はないでしょう
 
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