The Show Must Go On。/田中宏輔
 
覚が、意識というものに強く影響するのではないか、と。そういえば、詩人は、こんな話をしてくれたことがある。早坂類という詩人と、はじめて詩人が東京駅で会ったときのことだ。彼女の姿が、突然見えなくなったのだという。いままで目の前にいた詩人の姿が、ふっと消えたのだという。しばらくあたりを見回して、彼女の姿を探していると、彼女の手が、詩人の肩をポンとたたいたのだという。「どうしたんですか?」という声に、ハッとしたのだという。詩人は、彼女のことを才能のある書き手だと思っていたのだが、才能ではなくて、感覚的なものが、感受性というものが、あまりに自分に似すぎていることに気がついて、気持ち悪くなったのだという。彼女
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