The Show Must Go On。/田中宏輔
の腕や足にべったりとまとわりつく。手でぬぐうと、油じみた黒いしみとなる。まるで黒いインクでなでつけたみたいだ。言葉も埃のように、わたしに吹き寄せてくる。言葉は、わたしの自我を吸って、わたしの精神にぴったりと貼りつく。わたしはそれを指先でこねくり回す。油じみた黒いしみ。
彼は、ぼくのことを、なにかつまらない物でも捨てるかのように捨てた。捨てても惜しくないおもちゃか何かのように。でも、ぼくはおもちゃじゃなかった。それとも、おもちゃだったんだろうか?
詩人がなぜ過去の偉大な、詩人にとって偉大であると思われる詩人や作家に云々しているのかいぶかしむ人がいるが、そんなことは当たり前で、
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