The Show Must Go On。/田中宏輔
 
を知ることになるのである。この「共有する場の理論」は、ヴァレリーやホフマンスタールが述べている自我についての見解よりも優れたところがあるのではないか。少なくとも、その理論はより単純であり、適用範囲もはなはだ広いものである。それになによりも、破綻と思える箇所がまったく見当たらない。いまのところ、ではあるが。


「答えはいつだって簡単なほどいいものなのだ。」
(ノサック『弟』4、中野孝次訳)


愛によって形成されたものは、愛がなくなれば、なくなってしまうものだ。
なにがしかの痕跡を残しはするのだろうけれど。


そう言うと、彼は自分の言葉の後ろに隠れた。隠れたつもりになった。
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