Ommadawn。/田中宏輔
・シルヴァーバーグ『旅』2、岡部宏之訳)
つぎに掲げてあるのは、芥川龍之介の『或阿呆の一生』の冒頭部分である。他の作家の作品の言葉と置き換えてみた。まず、はじめに、夏目漱石の『吾輩は猫である』の冒頭部分の言葉を使って置き換えてみた。
それは或本屋の二階だつた。二十歳の彼は書棚にかけた西洋風の梯子(はしご)に登り、新らしい本を探してゐた。モオパスサン、ボオドレエル、ストリントベリイ、イブセン、シヨウ、トルストイ、……
そのうちに日の暮は迫り出した。しかし彼は熱心に本の背文字を読みつづけた。そこに並んでゐるのは本といふよりも寧(むし)ろ世紀末それ自身だつた。ニイチエ、ヴ
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