渦/soft_machine
 
 何故でしょうね
 掌の上で独楽が、止まっているように回って
 視線をさらいますけど、波のめくれや
 バケツの蟹の回転はどことなく
 記憶に繋がっているように眺めています

 流しの栓を抜きました
 溜めた水が、一方向に巻くものだから
 意識をそらすまいと思っても
 泡となったアルコールが身体の襞を熱し
 吐くたび息から蒸散してしまうのは

 もしかすると淋しいから
 痺れてしまうほど退屈だから
 紙のお皿にぽとりと落ちた羽虫の影が
 蛍光灯に炙りだされるものだから

 何故でしょうか
 私にも回るものがあるのだと思います
 一度だけ、遠い竜巻を見ましたが
 町に辿りつくことなく消えました




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