囲まれた時間/凍湖(とおこ)
わたしが習ったことのない踊りを
みんなが踊ってる
わたしには聞こえない音楽
踏めないリズムで
ようようと
あたりまえの顔で
大通りで隊列を組み
ひとつの祭りのように
わたしの身体は硬い板のよう
ひとりぼう然と
影のように止まったまま
油の切れた関節を抱えて
眺めてる
わたしにはわからないなにかが過ぎてゆくのを
しずかにしのんでる
いつしかぽっかりとあいた穴の底にいることに気づく
はるか頭上に華やかな紙吹雪が舞っている
遠ざかりたいのに
遠ざかっていってはくれないなにかに囲まれたまま
なすがまま埋もれていく
こんなふうでいつ息ができるのか
わからないまま
白く溶けた蝋のかたまりになる
火がついたこともないのに燃え滓になってこっけいな
ちいさくかわいい、ちびた蝋燭、人生
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