中天の夢/秋葉竹
その音がどこから聴こえるのか
気づかないうちに
漆黒の海鳴りの悲鳴が聴こえて来る
海辺はいわば
心を脱ぎ棄てられる秘密の岩場なのだと
知る限りのもっともらしい言葉を操る
僕がいるのを
照り返す凪の海面の上を撫でるかすかな風が
僕がここにしかいないのを
やさしい瞳で告げてくれる
光る瞳はあくまでも美しく
その幸せそうなゆうたりとした小波に
そおろりと
いだかれたいと想う波紋を
少し痺れるほどには感じさせられるのだ
このまま生きることが
あっけなく死ぬまでの道程だね
なにに驚いたとしても心が希む幸せは
そんなにややこしいうたなんかじゃないんだ
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