詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
 
ろうか。だったらもう、あっさりこのわたしのいのちひとつ捨てるだけでいい。
 わたしの詩は燃える塵みでしかない。
 夢の入口にさいごに残った塵みは、どこまでも分別を拒みつづける、わたし自身のいのちだったのだ。


  縄文の犬

わたしは縄文の舟を漕いでいる
クスノキを刳り貫いた
粗末な舟だ
赤い犬をいっぴき乗せていた
これが最後の猟だと
わたしはおもった

子どもたちは
夏の来なかった時代を知らない
もう
危ない猟をしなくても暮らしてゆける
海はあんなに近くなって
魚も貝も
たくさん獲れるようになった

おい、骨になるときは一緒だぞ

わたしの低い声
[次のページ]
戻る   Point(6)